山暮らしの楽しみ、春を迎える≪弥生≫
春の訪れ
3月末になると、米山に春がやってきます。雪が溶け始めた地面からはふきのとうが顔を出し、暖かい南風が吹き始めます。冬の澄んだ空気は次第に土や緑の匂いが混ざった春の香りに変わり、長い冬の終わりを告げます。日差しが差し込む時間も長くなり、お日様の下で過ごす時間が心地よく感じられます。うちのおもち(猫)も日差しが気持ちいいのか、広縁で伸びて、動く気がゼロです。

外に耳を澄ませると「ピヨピヨ、ぴちぴち」と、冬の間はほとんど聞こえなかった鳥の声と、「さらさら」と雪解け水の音が響いてきます。自然の目覚めを、音で感じることができるのも山暮らしの楽しみです。
春の味覚
ふきのとうは春を象徴する食材のひとつです。雪解けとともに顔を出すふきのとうは、ほろ苦い味わいが特徴で、天ぷらや和え物など様々な料理に使われます。特に「ばっけ味噌」と呼ばれることもある、ふきのとう味噌は、調理も簡単でごはんが良く進む。私はクルミを混ぜたばっけ味噌が好きです。

ちなみに、ふきのとうは花を咲かせるとあくが強くなって食べにくいのですが、代わりに伸びた茎の部分が美味しく食べられます。フキよりもやわらかく、苦みも少ないのでお勧めです。
また、春になると山菜採りが楽しみの一つになります。近くの沢沿いを歩けば、こごみやタラの芽、ウドなどが次々と顔を出します。天ぷらにすると香りが際立ち、一口食べるたびに「ああ、春がきたなぁ」としみじみ感じるのです。

米作りの開始
春の訪れは、同時に米作り開始の合図でもあります。春はやることが山積みで、毎日あれもこれもと忙しい日々が続きますが、その忙しさがなぜか楽しく感じられます。
雪山の田んぼでは、冬の間に木が折れていることが多く、雪が解けるとまずは倒木の撤去から作業が始まります。田んぼまでの道を開くのも一苦労。それでも、次第に青くなる大地や芽吹く木々に、自然の尊さと恵みを体と心で感じ、春の訪れがとてもありがたく感じます。
春の日差しを浴びると「さあ、今年も頑張るぞ」と不思議と力が湧いてくるのです。

春の楽しみ
自然とともに過ごす山暮らしの中で、春の訪れは特別な意味を持ちます。山の春は、ただ暖かくなるだけでなく、自然の変化を五感で楽しむことができます。春風にのって運ばれる香り、新緑の美しさ、野草の力強さ、そして春の味覚。これらすべてが、山暮らしの春の楽しみです。
特に、朝いちばんに外に出たときの感覚は格別です。夜の間に冷え込んだ空気が、朝日を浴びてほんのり温まり、山の匂いが一層濃くなる時間。遠くの山並みが春霞に包まれ、静けさの中にも生命の息吹を感じます。

まとめ
春の訪れとともに、山の暮らしは忙しさと楽しさが交錯します。自然の恵みを感じながら、米作りに励む日々は、山暮らしの中で特に充実した時間です。
猫のおもちものびのびと春を満喫し、鳥たちは元気にさえずり、野草は勢いよく伸びていく。
カントリーアウルズも、そんな春のエネルギーをもらいながら、今年の米作りに向けて準備を進めています。
やっぱり春は楽しい。そんな気持ちを胸に、これからの桜の季節を迎えましょう。
